20240921 山さんブログ-その93
…今日は9月21日…国際平和デー、そして宮沢賢治の日…だから何なんだ??ナンテ野暮な切り返しはしないで下さいまし…ふっと頭に浮かんだ程度…それさえ間違っているかもしれませんが、そんなことは私の知ったことではありません(=_=)…そもそも、知らないから間違うのであって、私の間違いは貴方様が修整しておいて下さいまし(-.-)…
…んで…今回ブログは、「致知」からのオハナシ(対談)の丸写しです…
…タイトルは、「人間の可能性をこうして花開かせてきた」です。
…今回ブログでこの対談を取り上げた理由は、タイトルの内容が、日本の発展的未来のあり方を大きく上昇させる事柄事柄であり、私たち国民が目覚めなければならない課題であり、国家的な命題として直ぐにでも取り組む必要があると思われることに依ります…(但し、山さんの独断的判断に基づきます(~o~))
…対談者の取組みからは、日本人の人間的魅力を総合的に高める事となる教育方針や、人間的な素地の向上はもとより、日本人(こども達)のIQを、平均(100が平均です)で20%高めている実績に裏打ちされていることで、その教育方針の効果が証明されています…
…因みに、IQ、120前後というのは、上位10%のグループに入ります…単純な理解としては、自分の子どもを下記に紹介する「いずみ学園」に入園させれば、IQ、120%(平均)が約束されるということです…但し平均ですから、140まで伸びるかもしれませんし、平均的な100前後に留まるかもしれません…
…ここで言いたいのは、下記に紹介する脳科学者の指導に沿えば、体力や体幹機能の向上が図られ、もう一方の指導に従えば、知能(IQ)は先天的なものではなく、育つ、向上するということです…ただし、「正しいやり方」なら…というオマケ付ですが…(-_-;)(=_=)<(_ _)>、正しさとは無縁のワタシが言うと正しくない…かもしれません…
…で、以前に取り上げたオハナシで、4人の子ども全員を東京大学理Ⅲに入学させた母親の紹介をしました…その教育方針のソフト判とでも言いますか…(-.-)
…で、昭和51年から開設している「いずみ幼稚園」での取組みです…3歳からの園児に瞑想、平家物語などを含む古典の読み聞か素読・素読・また素読)等から始まり…4歳からは俳句の創作で日本語を凝縮させる技を身につけさせ…5歳児には和歌の創作を通し、その日本語をさらに複雑化した思考に美しい日本語のリズムを付けさせる能力を開花させます…
…まるで寺子屋方式とも言える教育を50年間積み重ねた、古き良き日本型教育の定型判を近代化させた幼児教育のパイオニヤ、「小泉敏男」さんのオハナシがメインです…
…… 本人の写真はないのか?ですと??<(_ _)>… しばし待たれよ(^^)/~~~
…で、もう一方は、幾人ものオリンピック・メダリスト、多数のプロのスポーツ選手を育て上げ、スポーツ脳科学のレジェンドともいえる「林 成之」さん…です(-_-)
…歴史を振り返ってみますに、世界の植民地時代に日本だけが欧米列強の侵奪から逃れ、植民地化されることもなく…それだけではなく、明治の開国依頼、僅か40年で世界の一流国にのし上がった原点が、日本人の教育レベルの高さ、人格の高潔さ…いわゆる「心・技・体」の混合教育が戦前までの日本国パワーの源泉であったことは容易に察せられます…
…しかし大東亜戦争(第二次世界大戦)に敗戦し、一度は国家が灰燼に帰したものの、僅か20~30年で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われるほどの世界有数(第2位)の経済国家にのし上がりましたね…
…しかし、その後アメリカが主導した経済戦争という再度の敗戦により始まった(1990年)、失われた30年が未だ尾を引いています…平均的な国民所得や生活レベルが向上しない限り、「失われた30年」は「起き上がれない40年」へと移行していると思えるのです…現在の株高は実体のない砂上の楼閣とも言える現象ですよね…(-_-;)
…で、これではイカン…と言うわけで掲載するのが…強靱な国家の根幹たる「人物作り」、経済的産業国家の再現…ようは、強くて優しい国作りの基本となる教育方針の見直しを考えずにおられない、と思えますし、その分野を担う英才同士の対談です… …記事を貼り付けましょう…(=_=)
- スポーツ脳科学者 林 成之
- 東京いずみ幼稚園園長 小泉敏男
人間の可能性をこうして花開かせてきた
人間には無限の可能性がある、とよく耳にする。しかしどうすればそれが花開くのか。解を持つ人は少ない。その中にあって、脳神経外科医として世界初の「脳低温療法」を確立、さらに脳科学を生かして多数の五輪メダリストを育成してきた林 成之氏。専門外から幼児教育の道に入り、大人でも難しい古典・名文を園児がすらすら読みこなす、卒園児の平均IQが120という稀有な幼稚園をつくり上げた小泉敏男氏。人育てという普遍のテーマに挑む両氏の実践訓に耳を傾けたい。
脳科学と教育の交差点で
小泉 林先生、初めまして。小泉です。お邪魔いたします。
林 我が家までご足労いただいて、ありがとうございます。どうぞ、おかけください。
小泉 尊敬する先生にお目にかかれて、本当に光栄です。
林 小泉先生が致知出版社から出される『国語に強くなる音読ドリル』の原稿と、去年(2023年)の『致知』7月号の記事を編集部に送ってもらって、読みましたよ。すごいですね。僕も先生から教わっていたら、もっとましな人間になれたな。
小泉 いやいや(笑)。
林 本当に思いましたよ。幼稚園の子供たちが正座して瞑想している写真があったでしょう。背筋がピシーッとしていてね。
それと、音読学習。読ませているのは大人でも難しい、日本を代表する文学や古典の名文だというじゃないですか。それを3歳くらいの子供に教えるって、信じられない。子供たちも素直に受け止めて、すらすら読んでしまうんですから、大したものです。
小泉 幼稚園を立ち上げて来年(2025年)で50年になります。私は大学時代、小中学生を対象に塾を開いていましてね。いろいろな子供、特に成績が悪くて悩む子を見ながら、就学前の家庭で過ごす乳児期、幼稚園での教育が大きく影響するんだなと常々感じていたんです。
だから父と幼稚園をつくってから、来てくれた子にできる限りの教育をしてあげたくて、子供の発達によさそうだと感じた教育法はどんどん取り入れてきました。結果、皆が想像以上に成長してくれたというのが正直な実感です。
林 子供の才能、潜在能力を引き出す名人だと思いましたね。
小泉 それが、確かに長く子供を見てきて、自分たちの教育にそれなりの自信はつきました。ただ幼児教育を専門に勉強した人間ではないので、裏づけがないわけです。
それで別の脳科学者の先生にお会いしたり本を読んだり、随分もがきまして、10数年前に林先生のご著書と出合いました。特に『素質と思考の「脳科学」で子どもは伸びる』は、教育を実践する中で漠然と感じていたことが、雲が晴れるように明快になっていく感覚がありました。これってやっぱり脳によかったんだ! と一文一文に力を得る思いで読みましたね。
先生のおかげでようやく「子育ては脳育てですよ」とはっきりとお伝えできるようになりました。
スポーツ脳科学者 林 成之(はやし・なりゆき)
昭和14年富山県生まれ。日本大学医学部、同大学大学院博士課程修了。マイアミ大学医学部、同大学救命救急センターに留学。平成3年日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター部長に就任。27年より同大名誉教授。脳低温療法を開発し、医学界に貢献する傍ら、トップアスリートの指導に関わる。著書多数。『運を強くする潜在能力の鍛え方』(致知出版社)を刊行予定。
本能という基盤を鍛えて伸ばす
林 素晴らしい。実は僕も、近々『運を強くする潜在能力の鍛え方』という本を致知出版社から出す予定なんです。たぶん僕が死ぬ前に出す最後の本になると思います。
手前味噌ですけど、この本にはすごいことが書いてありますよ。潜在能力というと単純に、自分の中に眠っていて、表に出ていない力のことだと思うでしょう?
小泉 ええ。
林 私も昔はそう思っていました。だけど本当は、子供も大人も潜在能力という〝才能〟を秘めている。そしてそれは工夫次第で進化させることができるんです。
それなのになぜ、普段意識することがないかと言えば、人間の脳は難しいことを嫌うからです。
脳にはいくつかの本能があります。「生きたい」という生物としての根源的な本能から、「自分を守りたい」という〝自己保存〟の本能まで持っている。この自己保存の本能が厄介なんです。
潜在能力のようなすぐに理解できない、難しい情報が脳に入ってくると、自分を守ろうとして単純な話に置き換えるから思考が深まりません。さらにこの本能は、何に取り組むにも失敗しないために目標を小さくさせます。
小泉 無意識のうちに、私たちは思考や行動を制限されている。
林 人間の脳は本能を基盤に、そこから生まれる「気持ち」と一体で機能していて、その上に「心」が機能しているんですよ。ここが重要なポイントです。
独創的な発想や神業と呼ばれる技術、こういった人間の高次元の営みは「心」の働きを伴います。これらの高度な営みを生み出す潜在能力は、その基盤になる本能を鍛えることで高められるんです。このことを最後に伝えたくて、原稿を何度も何度も見直しています。
小泉 その話で言いますと、小さい子ほど本能に近いですよ。親が子供の本能を伸ばすように接することでものすごく成長します。
林 その通りですね。
小泉 ただ、人間には先入観というものがあります。殊に子育ては実の親や生まれ育った環境、限られた情報に左右されて、つまらない、辛いものと思い込んでしまう方が多いです。その先入観で育児に入るとどうなるか。
子育ては必ず壁にぶつかります。その時に、うまくいかないことを子供や環境のせいにして、子育てという尊い営みを大変陳腐なものにしてしまう。手探りで子育てをする怖さはそこで、きちんと軸を教えないといけないんです。
だから当園では入園前にご両親と面談して、子育てに対する意識合わせをします。子供が育つ上で望ましくない場合は、反発されるのは覚悟の上ではっきり言います。脳をきちんと育てていけば、先生の言うように心が素直で頭もいい、素晴らしい子に育ちますよと。
東京いずみ幼稚園園長:小泉敏男(こいずみ・としお)
昭和27年東京都生まれ。大学在学中に小泉補習塾を運営、卒業後の51年父と共にいずみ幼稚園を創設し、副園長に就任。石井式漢字教育、ミュージックステップ音感教育など画期的なプログラムを早期に導入。平成7年より園長。16年第13回音楽教育振興賞を幼児教育界で初めて受賞する。近刊に『国語に強くなる音読ドリル』(小泉貴史氏と共同監修/致知出版社)がある。
「あなたは1人で4人分、頑張って」
小泉 話は前後しますが『致知』8月号で林先生がお話しされていた「脳が求める生き方」は、大変勉強になりました。
先生は脳神経外科医として大勢の命を救うだけでなく、スポーツ脳科学者としてオリンピックのメダリストも数多く育てられています。きょうはぜひ、先生の育った環境、人の潜在能力をどう引き出してこられたのかを伺いたいです。
林 僕は富山の海辺の小さな漁村の生まれなんです。親父は、1回も怒られた記憶がないくらい寡黙な人でした。ただ一方の母親は、まあ強烈な人でしたね。
あれは小学校に上がる前でした。当時は終戦直後、産めよ増やせよの時代でね、よそは子供が4人なんてざらで、当時うちには妹が生まれる前、長男の僕1人でした。その日、母親がいつもと違う畏まった和服姿で、僕を呼びました。何だろうと思って前に座ったら、両手を畳に伏せてこう言った。
「お願いします。私は他の女性と違って、あなた1人しか産めない女です。だから、あなたは1人で4人分、頑張ってください」と。
小泉 幼稚園の年長さんくらいの子供にそんなお願いを?
林 面喰らいましたけど「ああ、お母さんは子供を産めないことに悩んでいるんだな」と幼心に感じて、引き受けることにしました。勉強もスポーツも、家の手伝いも4人分、猛烈に。僕は何でも全力投球してきましたけど、それが当たり前になったのは母親の言葉があったからです。
小泉 就学前のことなのに、ちゃんと記憶があるんですね。
林 ええ、強烈に残っています。おかげで、勉強だと数学や理科は後に全国模試4位を獲るほど得意になりました。あと、いつも全力で砂浜を走り回っていたので体力もあって、中学で相撲をした時なんかは20何名の同級生を連続で投げ飛ばしていました(笑)。
小泉 いやあ、そういう人だからトップアスリートの皆さんに響く言葉を発せるんでしょうね。
林 ただし1回も自分に満足したことはないです。常に「まだ足りない」と思っていますから。
それと、僕にはいい先生がいたんです。酒井先生という小学校時代の担任で、授業からテストからやることすべてがきちんとした、とても尊敬できる大人でした。
その酒井先生に、とある日曜日、電話で学校に呼び出されて行くと「林君、きょうはS君の家に行って仕事を代わりにやってくれないか。彼には学校に来るよう言ってくれ」と。家の仕事が大変で勉強が遅れていた同級生に、休みを使って授業しようとしていて、なぜだか僕を見込んで頼んでこられた。いまの時代、賛否両論あるでしょうけど、すごい先生でした。
結局、あの貧しい時代に先生に教わった同級生15人のうち4人が大学に進み、そのうち僕を含む2人が教授までいきました。村中が前代未聞の大騒ぎでしたよ。
小泉 そんな少年時代があったのですね。それにしても、尊敬している先生の言葉は、子供もちゃんと聞くんですね。
林 子供の心は純粋です。桁違いな要求でも、それが正しいと感じられるものであれば、その子なりに受け止めると思いますね。ともかく私は特別な先生に恵まれて、ここまで歩んでこられたんです。
語彙(ごい)が乏しいことの悲しさ
小泉 私が幼稚園で国語の教育に力を入れたのは、やはり塾で子供たちを教えていて感じた悔しさが一番大きいんです。
大学4年の頃でしたかね、教えていた中学生で、通信簿がオール1の子がいました。本当に勉強ができませんでしたけど、月謝をきちんと払って、塾に休まず通ってくるので、私も親身になって一所懸命指導していたんです。
それでもやはり、高校進学は諦めざるを得ませんでした。じゃあ手に職をつけさせようと思って調理師の専門学校を薦めて、入試に必要な志望動機を書かせてみました。ところがです。1時間待っても鉛筆が微動だにしない。一行も書けなかったんです。
林 ああ、全く書けなかった。
小泉 要するに、この子は語彙が決定的に不足していた。学校では先生に見放されていたので、最後は私が考えた文章を丸暗記させて、面接も私が先生の代わりに同行して何とかしましたよ。
本当に真面目でいい子でした。ただ一点、語彙力がないために考える力がなく、文章も書けなかった。国語力がなければ進学も就職も不利になり、未来が開けないことを痛感しましたね。
これを何とかしてあげたい思いもあり、1976年、いずみ幼稚園(東京都足立区)を開きました。
林 そういう経緯があったんですね。
小泉 素人でしたから、開園して何年か経って、具体的な方策を求めてあちこち訪ね歩きました。それで辿り着いたのが石井勲先生の提唱する石井式漢字教育でした。
初めて直にお会いした石井先生の言葉は、忘れられないですね。「知的障碍のある人でも本が読めます」と断言されたんです。実際に、先生の下に通う小さい子たちが、漢字仮名まじりの本を難なく読んでいたんですよ。
東京いずみ幼稚園園長・小泉敏男氏、副園長の小泉貴史氏の監修による新刊『国語に強くなる音読ドリル』(致知出版社)。
40年以上にわたって、園児たちに目覚ましい成長をもたらしてきた音読のメソッドを、家庭で楽しく取り組めるようテキスト化した
幼児教育にはびこる先入観との闘い
林 石井式は、どういう教え方をするんですか?
小泉 石井式漢字教育の特徴の一つは「読み先習」です。文字を書くのはしっかり読めるようになってからで十分という考え方です。
もう一つは「漢字はひらがなよりも易しい」。日本語って、他の言語と比べて同音異義語が圧倒的に多いんです。例えば「はし」。「はしのはしをはしをもってあるく」と書いて読ませても、何のことか分からない。これを「橋の端を箸を持って歩く」と書いて読んだらずっとイメージしやすい、分かりやすいじゃないですか。
林 確かに、分かりやすい。
小泉 これは当時かなり画期的な教育法でした。というのも、園児に漢字仮名まじりの絵本や紙芝居を園児に見せただけで「文部省の指導に違反している」と地元の教育委員会や役所、酷いと同業者から糾弾されることが珍しくない時代でしたから。もっとも、これは未だにある話なんですが。
だから当園でも初めは職員に反発されて、親御さんたちも「こんな先取り教育をする幼稚園に入れたつもりはない!」と非難囂々でした。それでも私は石井式の価値を信じていたので、石井先生を招いて職員と勉強会を開催して少しずつ理解を得ることにしました。
どういう教育を行ったのか少し紹介しますと、本当にシンプルです。当園では、下駄箱や制服、体操着に貼る自分の名前はもちろん、クラス名も「薔薇」「蒲公英」とすべて漢字にしています。出席の確認をする時も同じで、先生が園児の名前を漢字で書いたカードを順不同で見せ、同時に名前を読み上げる方式にしてみました。
林 とにかく漢字を読ませるんだ。
小泉 「読み先習」が基本だとお伝えしましたけれども、こうして園児に毎日漢字を読ませていくと、点呼で先生がカードを掲げただけで、読み上げる前に「ハイ! 〇〇です」と自分から返事をするようになってきました。
それから、園児に毎月、私たちが厳選した漢字仮名まじりの絵本を1人1冊持たせました。
林 全員に同じ絵本を渡す?
小泉 はい。最初は、先生が絵本の文を子供たちに読み聴かせます。これを「素話」といいます。
で、絵本に出てくる漢字の部分だけをカードにしたものを読みながら、黒板に貼っていく。次に子供たちに目を閉じさせて、その間に黒板からカードを1枚だけ抜いて、どれがなくなったのかを子供たちに当てさせます。ゲーム感覚で楽しく続けていると、子供たちの中で漢字と音が一致してきます。最終的に、手元の絵本を先生の声に従って指でなぞりながら読めるようになるわけです。
いろんな批判への一番の反論になったのが、子供たちの変化でした。漢字仮名まじりの本を楽しそうに、すらすら読む子。漢文を送り仮名なしで読む子……。それを見たら職員も保護者も「これはすごい」と成長を実感して、反発の声は消えていきました。
林氏が発案し、医局メンバーを変貌させた画期的なモニターシステム。写真はベッドサイドのもの〈提供=林成之氏〉
脳を前向きな気持ちで動かす
小泉 50年近く教育に関わって思うのは、子供たちは「面白い」と思ったら、難しくても自ら進んでやるようになるということですよ。林先生もこの間の『致知』で、そういう前向きな気持ちを引き出して潜在能力を高める脳の回路の話をされていましたよね。
林 これは小さいお子さんはもちろん、大人にも重要なことです。
まず、目から入った情報は、後頭・頭頂葉の空間認知中枢で認識されます。これが第一段階です。前回お話ししましたが、脳はここで空間認知能を働かせて物事との〝間合い〟を図っていて、同時に「気持ち」が動きます。
次にその情報はA10神経群に到達します。ここは危機感を司る「扁桃核」、好き嫌いを司る「側坐核」、言語や表情を司る「尾状核」、それから意欲や自律神経を司る「視床下部」など、重要な領域が集まった部分です。
まとめると、第一段階で「気持ち」が生まれ、第二段階に届いた時に好き・嫌い、面白そう・つまらなさそう、といった「感情」が生まれてくるわけです。
小泉 気持ちと感情は別物なんですね。
林 問題は、この感情の扱いなんです。好きな科目の勉強はすいすい頭に入る、ずっと覚えていられるけど、嫌いな科目の勉強はいくらやっても理解できない、頭に入らないという経験があるでしょう。要はA10神経群で「つまらない」「嫌い」というマイナスのレッテルを貼られた情報は、次の第三段階にあたる前頭葉の働き(理解・判断、思考、発想、記憶)が損なわれてしまうんです。
小泉 教育者として気をつけないといけない部分ですね。
林 ええ。余談ですが、富山県の小学校で講演した時、子供たちに聞いたんです。「この中で先生が嫌いな人は手を挙げてください」と。そうしたら10人ほど挙がって、先生は唖然ですよ。僕は即座に、「いま、手を挙げた人は皆バカになります」と伝えました。
これは本当にそうなんです。昔、頼まれて指導していたある親子は、子供が「嫌い」という先生を母親も一緒になって批判していました。すると、何を勉強しても頭に入らなくなってしまいました。これは脳を育てる「育脳」の観点では最悪です。A10神経群は〝頭をよくする鍵〟と言えるでしょう。
それを踏まえた上で大事になるのが「自己報酬神経群」を動かすことです。これはその名の通り、自分への報酬(ご褒美)によって機能する神経細胞群です。興味を持って自分から取り組み、やり遂げる。つまり自主性、主体性を持つ。すると前頭葉が働いて思考力や記憶力が高まってくるんです。
小泉 自主性や主体性が脳の働きを高めてくれると。
林 そうなると情報が素晴らしい発想に進化し、記憶に深く刻まれ、独自の思考、そして「心」が生まれます。これが第四段階です。
ここから先は、脳が先ほど申し上げた高次元な営みを生み出せる状態に入り、潜在能力が高まっていきます。このプロセスは一つの連合体として機能しているので、私は〈ダイナミック・センターコア〉と呼んでいます。
ほんの少しの工夫が潜在能力を発現させる
小泉 改めて勉強になりました。
林 この仕組みを悟ったきっかけは30年以上も前、52歳で母校日本大学の附属病院で救急救命センター部長になった時でした。
人の命を扱う現場ですから、僕は当然、部下の医師や看護師も全力投球です。僕は、単に命を救うだけで飽き足らなくて、患者さんのために世界一の医療をしたいと思ったんですね。それである朝、皆の前でこう言ってみました。
「みんな、もし自分が患者さんの家族だったら、この救命センターで一番優秀な医者に診てほしいと思わないかな?」
小泉 確かに、家族が手術を受けるなら誰でもそう思います。
林 しかしこれが運の尽きでした(笑)。トップの僕に「先生、明日から1週間当直をお願いします」と来た。さすがの僕も1週間で限界を感じて、一人じゃ最高の医療はできないと気づきましてね。
それが、世界最先端の機器の開発に繋がりました。救命センターの医師と看護師が、ナースステーションやベッドサイド、カンファレンスルーム、そして自分の医務室から、患者さんの容態を絶えずモニターできるコンピュータ管理システムを考えついたんです。
詳細は省きますけど、アメリカに飛んで現地企業に突撃し、門前払いを食らいながら、熱意を押し通して受け入れてもらいました。
莫大な予算は、後に総長になる医学部長・瀬在幸安先生が「そのお金は本部から俺が借りてやる」と助け船を出してくれてね。
その結果はというと、患者さんの心拍出量、肺動脈圧、脳圧、酸素分圧、そして脳温度。これらが全部リアルタイムで見えるようになった。驚いたのは看護師たちで、10人でチームを組んで毎日夜10時まで勉強会を始めて、医師と遜色ないレベルで患者さんを診られるようになったんです。一気に医師が増えたような感覚でした。
小泉 そんなことがあるんですね。
林 さらにこれが僕の研究、世界初の「脳低温療法」の確立に発展するんですけど、その始まりはあのたったひと言だったわけです。
それで私が言っているのは、人のためになる「原点」に従って「全力投球」する時、潜在能力は最もよく発揮される。工夫すればとんでもないことが起きるのが人間の脳であり、潜在能力なんです。
勝手に本能が育つ〝心のプレート〟づくり
小泉 先生は本能を鍛えることが潜在能力を高めるとおっしゃいました。すると実際にはどの本能を鍛えればいいのでしょう。
林 人間の本能の中で、特に強い力を持っているものがあります。1、生きたい
2、知りたい
3、仲間になりたい
4、伝えたい
5、自分を守りたいです。
前半の3つは、脳を構成し、互いに繋がり合って情報を処理する脳神経細胞がもともと持っているもの。残りの2つは、既に説明した〈ダイナミック・センターコア〉の働きで生まれてくる本能です。
問題になる「自分を守りたい」は「生きたい」に根差していて、決して悪者ではありません。これをうまく克服して、美しい本能を発揮することが大事なんです。
小泉 先ほど空間認知能の話がありましたよね。当園では、毎朝の教室での活動の初めに3分、必ず時間をとって「立腰」と「瞑想」をするんです。姿勢と脳って実際、どんな関係があるんですか。
林 姿勢が崩れたらおしまいです。情報が入ると空間認知能が働いて「気持ち」が動くんですよ。姿勢が悪ければ空間認知も歪むので、気持ちが落ち着きません。
小泉 やっぱり。姿勢の悪い子は授業でもキョロキョロしてしまって集中できません。当園では、まず教室で子供たちに正座してもらって、菱木秀雄さんの詩「腰骨を立てる子」を皆で唱和するんです。
下腹に力を入れて
腰骨をシャンと立ててごらん
肩や胸に力を入れないで
あごを引きましょう
素晴らしい姿勢です
元気な体の基です
頭が澄んできます
あなたのわがままに克てる姿勢です
あなた自身を見直せる姿勢です
きびしい世の中を乗り切る姿勢です
唱和が終わったら目を閉じて、瞑想です。それでも、やっぱりソワソワしてしまう子がいるので、心の落ち着く音楽を小さい音量で流す。するとそういう子も自然に耳を傾けて、皆と一緒に座ってくれるんです。
林 うまいですね。
小泉 初めはできない子がいますけど、そっと背中を擦って正してあげて、全員整ったら先生も一緒に取り組む。これを毎日続けると、4~5歳の頃にはもう立派な姿勢が当たり前になって、自制心が働く素直な子に育ってくれます。
林 褒め方も大事ですよね。
小泉 大事ですね。うちの先生が実践しているのは〝具体的に褒める〟ことです。「□□君、背筋がしっかりと伸びて、格好いいですね!」と。家庭でもそうで、子供は何となく褒めるだけでは伝わりません。具体的に言うから嬉しくなって、習慣になるわけです。
林 いい姿勢が整ってくると「負けたくない」という気持ちが育ちます。子供の場合、何に取り組むにも簡単に諦めない、粘り強い子に育ってくれるでしょうね。
僕は美しい姿勢を「心のプレート」と呼んでいますけど、美しい姿勢は、本能を勝手に鍛えてくれる素晴らしい基盤になるんです。
簡単に諦めない、粘り強い子を育てる「立腰」と「瞑想」。美しい姿勢は〝心のプレート〟になるという
潜在能力を引き出す言葉の使い方
林 この夏はパリオリンピックが話題になりましたね。僕は、体操男子元日本代表の内村航平さんは素晴らしいと思っています。
小泉 あの人はすごいですよね。
林 彼は過去4大会に出場して、個人総合2連覇、計7個のメダルを取ったそうですが、最近こんなことを言っていますよ。「体操を知らない人が見ても美しいと思えるような演技が目標でした」と。
これを真似したら日本選手は皆、メダルを取れると思う。
小泉 強さの秘訣は何なんですか。
林 長らく指導してきた卓球女子日本代表の監督に昔、伝えたことがあるんです。彼女が「先生、53年間、中国に勝てていないんです」と言ってきた。それを聞いてすぐ言いましたよ。「勝ったことがないって言ったら、もうおしまいなんです。逆に『きょうは中国選手団の調子が悪い。私は絶好調!』って大きな声で喋ってから試合に入るように」って。
解説者として活躍中の石川佳純君も指導していましたから、相手がどれだけ強くても「きょうは自分の日だ!」と思って試合に臨みなさい、とよく言いました。
小泉 それはつまり?
林 潜在能力は、少しでも負けを意識すると消えていくんです。例えば誰かに勝ちたい、自分が一番になりたい。こういう目標では、その中に「負けたくない」、自己保存の本能が働くからですよ。
小泉 幼稚園児も競争心の強い子はいますけど、工夫しないと逆に潜在能力が抑えられてしまう。
林 その意味で、見た人が美しいと感動する演技をする、というのはとてもいい目標ですよね。
それと、アテネ・北京の両オリンピックで金、二連覇を果たした競泳の北島康介選手に教えたことの一つが「同期発火」です。
小泉 ああ、同期発火。
林 改めて説明すると、同期発火は脳が考えを一つにまとめる時、ダイナミック・センターコアで起きる現象のことです。泣いている人を見ると悲しい気持ちになったり、心から喜んでいる人を見ると嬉しい気持ちになったりしますよね。脳には「仲間になりたい」の本能がありますけど、脳には相手と同じ感情、同期発火のループをつくろうとする力があるんです。
だから「絶対に勝てると思えば肉薄できる可能性が高まる。強い者が常に勝つとは限らない」「競り合ったらこっちのものだ」と、いろんな選手に伝えてきました。
パリ五輪体操男子団体総合で金メダルを獲得した日本チームをねぎらう内村航平さん(左から2人目)Ⓒ時事
いいところを摘んで、喜ぶ
小泉 いやあ、この同期発火は、今度本も出しますけれど朗唱(音読)教育に特に生きていますね。当園では42年前から朗唱を取り入れていて、一貫して集団、お友達や先生と一緒にやることを大事にしているんですよ。
林 先ほどの瞑想もそうでしたね。
小泉 はい。具体的には、3歳児には諺、4歳児には俳句、5歳児には和歌・百人一首というように、リズムがいい、短くて覚えやすい美しい日本語を段階的に与えていきます。先人によって長く受け継がれてきた日本語特有の、美しい響きを感じてほしいからです。
子供たちと一緒に、それぞれの語句を毎週2つか3つずつ、先生が「先読み」で読み上げていきます。1週間もしないうちに子供たちは覚えてしまうので、そこからは子供たちの前にその諺なり俳句なりが書かれたカードを出して、先生が「はい!」と言えば皆が声を揃えて読むようになる。
林 幼児期の脳は、言葉と音楽を学ぶに相応しい最盛期ですから、この時期にいいものを取り入れておくことは非常に大事です。
小泉 その効果を最大限に高める上で大事なのは、間違いを指摘したり、叱ったりしないこと。「できている・できていない」をいちいち確認しない、これに尽きます。
幼い時期に皆の前で嫌な思い、恥ずかしい思いをすると、自分を守りたいから挑戦しなくなって、コンプレックスになるからです。
まず「先読み」で先生も一緒に読むので、読めないことはない。ポイントは子供がいい読み方、楽しそうに読んでいたらそれを摘んで、喜んであげることですよ。
林 面白い表現ですね。
小泉 例えば「ああ、なりきって読んでいるね」「ここの読み方がいいね」と褒めてあげるんです。音読は勝ち負けではないから、他の子の表現を見て「あの子すごいな」って素直に認められる。そこから表現する楽しさ、勉強する楽しさが生まれるじゃないですか。最初は楽しめなかった子も、周りの子が楽しそうにやっていてつられてやり始めたりもします。
林 それ、同期発火ですよ。心を込めて読むこと。そうすると周りの子の脳に入るんですよ。
小泉 子供の素直な心、もっとやりたいという気持ちを引き出してあげれば何のことはない、子育ての原理は本当は単純なものですよ。
林 こうやって3、4歳の子供たちが古文・漢文を読めるようになっていくんですね。
小泉 ええ。そういう思いも込めて、今回の本には一見、難しすぎないかと思う名文もたくさん入れました。中でも人気が高い作品の一つが『平家物語』なんです。
実はきょう、卒園生の7歳の男の子が音読している映像を持ってきました。源平合戦の屋島の戦いで、弓の名手・那須与一が扇の的を当てるために祈るシーンです。流しますよ。
卒園生 『平家物語』巻第十一、那須与一。
『南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、願はくはあの扇のまンなか射させてたばせ給へ』…
…林 これはすごい。抑揚、芝居もしっかりつけて、もう立派な〝こども講談師〟ですよ。
小泉 朗唱を始めた原点は、よいインプットをすれば自ずとよいアウトプットに繋がるはずだという信念でした。彼を見て分かる通り、それは母国語を学ぶにも同じで、質のよい日本語を頭に入れれば、豊かな日本語が身につく。
当園では卒園した小学1、2、3年生が通える「才能育み教室」を週末に開いていて、約20年前から、今後の指導の参考に知能指数(IQ)を測っているんです。そうしたら、最初の卒園生の平均が既に120だったんですよ。絶対にいいと信じた教育を着実に積み上げてきた成果だと自負しています。
人育てという国育ての道を歩く
林 これからますます少子高齢化が進んで、AIがいま以上に発達し、いわゆるイノベーション時代が来るとずっと言われています。乳幼児をどう育てるかは、喫緊の課題になります。そして、その子育ての鍵を握るのはお母さんです。これからは小泉先生より、奥様が活躍する時代になりますよ(笑)。
小泉 本当に、これから幼児教育がどうなっていくのか不安は尽きません。ただそれ以前に、私たちはこの50年近く、子供たちに無理をさせる特殊な「早期教育」をしているんじゃないかとずっと批判されてきました。お伝えしておきたいのは、決して特殊じゃない、「適時教育」だということです。
一度子供たちと向き合ってみれば、無理強いして何かができるようになることなんてないと分かりますよ。脳の発達に合わせて、先人たちから受け継がれてきたいいものを与えて、楽しみながら学ぶ環境さえ整えてあげれば、自分で学んで成長していく。それを大人の先入観で邪魔してはいけない。
素人からこの道に入ってそれを学ばせてもらった自分にこそ、伝えていく使命があると思います。
林 僕は医者から脳科学に入り、スポーツ指導、育脳に携わってきた人間で、我が道これしかないと思うことはありませんでしたが、85歳のいままで、患者さんなり教え子なり、どんな人に対しても「全力投球」を守ってきました。これからは命懸けで、潜在能力を展開させる道を伝えていきたいと思っています。現に、一度死にかけた僕が蘇っているんだから。
小泉 死にかけて、蘇った?
林 3年ほど前から、立て続けに6つの病気を患いました。初めに心筋梗塞、次いで鬱血性心不全、腎不全、前立腺がん、糖尿病、そして眼底網膜出血。一度は心臓が止まった体なんですよ。
医者というのは偉くなるほど、自分が病気をしたら惨めですよ。教え子がたくさんいるのに、責任重大だから手術をやろうとしない。
最後にたった一人、「やります」と手を挙げてくれた子がいてね。運がよかった。命の恩人ですよ。
小泉 ご無事で何よりです……。
林 ところが体調は安定したけど、能力の低下に愕然としました。急にいろんなことができなくなった。
でも、最後と思って潜在能力の研究をまとめるうちに、ああ、私利私欲を捨て、人のためになる原点に従って、全力投球することが潜在能力を発揮させるんだと気づいたんです。猛烈に仕事を始めて、能力が回復してくるのを感じました。想定外に明るい世界を知って、老後が楽しくなりましたよ。
今後は人口を増やす努力だけではだめ。潜在能力を高めて、自分流の道を拓く人を増やさないと。
小泉 これだけ時代が変わっても「子育ては人それぞれ」で、旧態依然とした部分があるのが幼児教育の現場です。私は思うんです。いやしくも幼児教育のプロなら、脳科学の知見くらい取り入れないでどうする? と。それは、日本がどうなるかを真剣に考えていないのと同じではないですか。子育ては脳育て、いや国育てと言ってもいい、大事なものですよ。
林 小泉先生にはいまの教育の上に、きょうお話しした本能の鍛え方を生かして、一層頑張ってほしいですね。こういう見識を持った先生方、ご両親、特に、いいお母さんの教育を受けて、日本を担う素晴らしい子供がたくさん育ってくれることを心から願っています。
小泉 そんな社会を実現するためにも、当園一同、引き続き先生に学び、この道を歩いていきます。きょうはありがとうございました。m(_ _)m
…と、まあ、いずれ劣らぬ叡智の対談です…
…ということで、山さんブログの今日はここまでです~、あ~、楽ちん楽ちん…(^^)/~~~